三つの備え

治乱ハ数ナリ。勇怯ハ勢ナリ。強弱ハ形ナリ。
治乱を左右するのは統制力のいかんであり、勇怯を左右するのは勢いのいかんであり、強弱を左右するのは態勢のいかんである。

①数
指揮命令系統を確率して、しっかりした組織管理を行うことである。そうすることで強い統制力が生まれ、どんな局面に立たされても整然と行動することができる。
②勢
勢い。激しい勢いに乗じ、一瞬の瞬発力を発揮するのが戦上手の戦いかたである。

善ク戦ウ者ハ、コレヲ勢ニ求メテ、人ニ責メズ
戦上手は何よりもまず勢いに乗ることを重視し、一人一人の兵士の動きに過度の期待をかけない。

調子の波をうまくつかむ。

③形
優位な態勢。マイペース。
不利な態勢に陥り、相手のペースで戦うことを余儀なくされれば、持てる力を充分に発揮することはできない。
そうなっては、どんな戦巧者でも苦戦を免れない。
優位な態勢を築くことができれば、弱い組織でも弱点をカバーすることができるし、強い組織なら持てる力を十二分に発揮して戦うことができる。

善ク敵ヲ動カス者ハ、コレニ形スレバ、敵必ズコレニ従イ、コレニ予ウレバ、敵必ズコレヲ取ル。
用兵に長けた将軍は、敵が動かざるを得ない態勢をつくり、有利な餌をばら撒いて食いつかせる。
まわりからじっくりを相手をその気にさせるように仕向ける(やんわりと持ちかけるアプローチの仕方)

善ク戦ウ者ハ、人ヲ致シテ人ニ致サレズ
戦上手は相手の作戦行動に乗らず、逆にこちらの作戦行動に乗せようとする。

主導権を握るためには、まず「先手必勝」である。
心に余裕があれば、判断力もさえあらゆる事態に対して冷静に対処することができる。

敵に作戦行動を起こさせるためには、そうすれば有利だと思い込ませなければならない。
逆に、敵に作戦行動を思いとどまらせるためには、動けば不利だと思い込ませることである。
敵の態勢に余裕があれば、手段を用いて奔放に疲れさせる。敵の食糧が十分であれば糧道を断って飢えさせる、
敵の備えが万全であれば、計略を用いてかき乱す。